あとがき

 検察の理念(抜粋) 最高検察庁 2011年9月28日制定

 刑罰権の適正な行使を実現するためには,事案の真相解明が不可欠であるが,これには様々な困難が伴う。その困難に直面して,安易に妥協したり屈したりすることのないよう,あくまで真実を希求し,知力を尽くして真相解明に当たらなければならない。
 我々が目指すのは,事案の真相に見合った,国民の良識にかなう,相応の処分,相応の科刑の実現である。
 権限の行使に際し,いかなる誘惑や圧力にも左右されないよう,どのような時にも厳正公平,不偏不党を旨とすべきである。また,自己の名誉や評価を目的として行動することを潔しとせず,時としてこれが傷つくことをもおそれない胆力が必要である。
 同時に,権限行使の在り方が,独善に陥ることなく,真に国民の利益にかなうものとなっているかを常に内省しつつ行動する,謙虚な姿勢を保つべきである。
 これらの姿勢を保ち,使命感を持って各々の職務に取り組むことを誇りとし,刑事司法の一翼を担う者として国民の負託に応えていく。

3 無実の者を罰し,あるいは,真犯人を逃して処罰を免れさせることにならないよう,知力を尽くして,事案の真相解明に取り組む。
4 被疑者・被告人等の主張に耳を傾け,積極・消極を問わず十分な証拠の収集・把握に努め,冷静かつ多角的にその評価を行う。
10 常に内省しつつ経験から学び行動するとともに,自由闊達な議論と相互支援を可能とする活力ある組織風土を構築する。

 私も「検察の理念」の制定に関わりを持ち,全国長官会同の席でその内容を承認する拍手をしたことを覚えています。
 当時は,こんな当たり前のことを今更文章化するのかと思ったものでしたが,本稿で見てきたように,必ずしもこれらが実行されているとはいえない現実があり,これらのことを実行することは大変なことなのだと改めて認識しました。
 正に「検察の理念」は,検察の理念であるべきものだと思います。

 もとより私は,本稿で記述したことを全部実行できたわけではありませんし,お前に偉そうなことをいう資格があるのかと思う人もいるでしょう。
 しかし,私は,自分なりの正義や常識に基づいて,時には上司と衝突しながらも真剣に事件の捜査・処理に取り組んできたと自負しており,良心に恥じるところはありません。

 後輩のみなさんには,是非「検察の理念」を具現し,活力ある職場で,国民のために検察権を行使してほしいと思います。

           丈夫は玉砕するも甎全を恥ず