常識的な捜査・処理

 NHKの平成25年度上半期の連続テレビ小説「あまちゃん」が好評で,「じぇじぇじぇ」という方言が広まりました。検察で決裁官を長くやっていると,「じぇじぇじぇ」と声を出しそうな事件の決裁が上がってきたり,無罪判決を読んで「じぇじぇじぇ」と思ったりしたことが少なからずありました。

 こんな事件を起訴したら一般常識に照らしておかしいだろうと思われるような事件が起訴されたり,起訴されようとしたことがあったということです。このような事件は,通常,主任検察官が警察の捜査をチェックして不起訴にするものですし,主任検察官を通っても,決裁官の段階でチェックされて不起訴になるものですが,決裁官としての能力が十分でない者がそのポストに就いていたり,多忙等が理由で決裁官が事件をよく把握していなかったりすると,チェックをすり抜けて起訴されるということが起こるわけです。身柄を拘束されている被疑者にとっては,こんな検察官や決裁官に当たったら不幸・不運の極みです。

 また,たとえば,会社員が突然何かの容疑で逮捕されたとします。勤務先が理解のある会社であればいいのですが,普通の経営者は,たとえ本人が否認していても,警察が間違った逮捕をすることはないと考え,また,取引先等の目を意識し,懲戒解雇にしたりすることになりかねません。逮捕勾留中に容疑が晴れて釈放されても,起訴されて無罪になっても,もう元の職場に戻れず,再就職もできずに家族も路頭に迷うという事態が起こり得るわけですから,権力,特に強制権力を行使するに当たっては,その被疑者の立場や将来のことを一度は是非考えてもらいたいと思います。このことは弁護士になって実感したことであり,私も検察官をしているころにはこの点に対する配慮が十分でなかったと反省しているところです。

 さらに,仮に在宅事件であっても,無実の罪で長い間被告人席に縛り付けられる苦痛や,検察官の処理が遅いために長い間被疑者の立場に置かれている者の不安や苦痛にも想像力を働かせてほしいものです。早期着手・早期処理は,常識的な捜査・処理を行う大前提であることは間違いないと思います。