論理則・経験則

 刑事裁判においては,第一審の審理で直接主義,口頭主義が採用され,証人尋問や被告人質問等を直接行って心証を形成し,事実認定をすることとされ,控訴審は事後審として一審判決の認定に論理則,経験則違反がないかを審査することとされています。そして,最高裁判所は,原判決に憲法違反,判例違反等がないかを審査する法律審であることを原則としているので,控訴審の事実認定の当否に介入することには慎重でなければならないとされています。しかし,最高裁は,原判決に「重大な事実誤認があり,原判決を破棄しなければ著しく正義に反する」ときには,原判決を破棄できることになっていて,最高裁も原判決の判断が論理則・経験則に照らし不合理といえるかどうかの観点から審査すべきであるとされています。

 裁判員裁判には一般市民も参加するわけですから,論理則・経験則というのも法律の専門家にだけ通用するようなものであってはならず,「一般常識」とか「一般的なものの見方」と言い換えられるべきものであると思います。論理則・経験則に違反するというのは,平たくいえば,「その判断は常識的に考えておかしいだろう」とか「その判断は誰が考えてもおかしいだろう」ということになろうかと思います。

 しかし,原判決に論理則・経験則違反があるかどうかについての判断が最高裁の裁判官の間でも分かれることがしばしばあるのですからやっかいです。証拠の評価や事実認定というのはそれほど難しい問題だということです。
 最近最高裁が逆転無罪を言い渡した2つの性犯罪事件を紹介します。