[事例] 当て逃げ傷害事件

 被告人は,友人が運転する車に乗車中,被害者が運転する車に当て逃げされたことに激怒し,友人とともに,路上で被害者を殴る,蹴るなどして重傷を負わせたとして友人とともに起訴されました。被告人は,捜査公判を通じて,自分は友人が暴力を振るうのを止めただけだとして否認していました。

 この事件には,たまたま現場を通りかかるなどした目撃者が数名いて,2人の男が被害者の男性を蹴るなどしていた旨供述(目撃者のうちの1人は,車左側の助手席から降りた男が被害者を激しく蹴っていたと供述)していましたし,共犯の友人は,被告人も一緒に被害者に暴行を加えた旨供述していました。この事件の被害届が出されたのは,事件から数か月後のことでした。

 公判では,目撃者の証人尋問や現場検証などが行われ,当時の現場の状況では,障害物が邪魔になって目撃者が被告人らの足もとを見るのは困難で,2人がかりで蹴ったりしていたとの証言は必ずしも信用できないこと,被告人の友人が当時乗っていたのは左ハンドルの外車であり,運転席から降りた友人が激しい暴行を加えていたと認められること等が判明したほか,警察が存在しないと回答していた被告人による110番通報の録音記録(被告人が,「やめろ,やめろ」などと叫んでいる声が録音されていた。)が存在していたことが判明して取り調べられ,無罪が言い渡されました。

 110番通報の内容の保存の有無,保存されているとしてその方法(メモ,レコーダ等)については,各都道府県警によってまちまちであったと思いますし,現在どのような取り扱いがされているのかも不明ですが,本件においては,警察が,当初存在しないと回答していた録音記録が存在することが明らかとなり,被告人の弁解が裏付けられ,無罪の決定的な証拠となったのでした。
 警察が存在しないと回答していた証拠が,後にでてくることはよくあることですから,注意が必要です。