[事例] 弁護士脱税事件・遠隔操作事件

 東京地方裁判所は,平成26年5月21日,個人の不動産取引で得た22億円余りの所得を被告人らの関係会社の取引であるかのように仮装して隠し,所得税8億円余りを脱税したとして起訴された弁護士と公認会計士の被告人2人に対し,会社の取引だと認められるとして無罪を言い渡し(検察は控訴したようです。),その際,「長期の身柄拘束は裁判所としても反省する」と述べたと報道されています。求刑は,弁護士につき懲役3年6月及び罰金2億5000万円,公認会計士につき,懲役2年でした。両被告人は,約2年3か月間勾留されていたということです。
 結果的に無罪になったところで,2人は約2年3か月間勾留されており,実質的に禁錮(懲役)2年3月の実刑判決を受け,公認会計士にいたっては求刑以上の量刑を言い渡されて服役したようなものであり,「裁判所としても反省する」などといわれてもとても納得できるものではないでしょう。検察官請求の証拠が同意されるか検察官側の立証が終わるまでは保釈しないという,これが人質司法の実態です。
 上記脱税事件の場合,被告人らが保釈になった後,罪証隠滅が行われたために無罪になったのでしょうか。そんなことをしたら検察官が保釈の取消を請求しているはずですから,そんなことはなかったと思います。
 被告人らが主張していたとおり,裁判所は本件不動産取引は会社の取引だと認めて無罪としたわけですから,そういう実態を指し示す証拠が初めからあったはずであり,被告人らからすれば,罪証隠滅工作を行う必要など元々なく,「裁判所は何を考えて保釈を認めないのだろう,絶対に許すことはできない。」と思っていたはずです。

 パソコン遠隔操作事件については,「自白」のところでも触れており,検察官,裁判所は,「真犯人を装ったメールを送信するなどの罪証隠滅行為を行うおそれがある。」として1年以上にわたり被告人の保釈を認めなかったわけですが,被告人が実際に「真犯人からのメール」を送信したからといって,「それ見たことか。われわれがいったとおりになったではないか。保釈しないことは正しかった。」などと考え,人質司法に自信を持ってもらっては困ります。
 極めて特異な人物による希有な罪証隠滅行為が行われた,例外的な事案であると認識すべきですし,意地の悪い見方をすれば,もっと早く保釈していれば,被告人が罪証隠滅工作をもっと早く行い,「自白」が得られてもっと早く真相が解明できた可能性があったともいえるのであって,裁判所や検察官が真相解明を遅らせたと評価することさえ可能だと思います。
 罪証隠滅工作などというものは,簡単にできるものではありませんし,やったことが発覚すれば,保釈が取り消されるばかりか,検察側の証拠構造を堅くするだけだと思います。